マンションを売却するときに誰もが必ず気になることがあると思います。 それは「税金がどれくらいかかるか」ということです。
- マンション売却時に必ずかかる税金
- マンション売却時に利益が出た場合
税金については、慣れない単語も多いので複雑そうに感じると思いますが、体系的に学ぶと意外と簡単に理解できて、何を準備すれば良いかわかってきます。
本記事ではマンション売却時に必ずかかる税金や、利益が出た場合に発生する譲渡所得税、税金の計算とシミュレーション、控除・特例について解説します。
もし、売却にかかる税金の種類についてある程度理解していて、節税の制度を先に詳しく知りたい、という方は「売却時に使える控除・特例で節税を徹底(最重要)」までお進みください。
マンション売却時に必ずかかる税金
マンションを売却する際に必ずかかる税金は次の2つです。売却して利益が出なくても必ず発生します。
- 印紙税
- 登録免許税
印紙税
印紙税は、不動産の売買契約書に貼る収入印紙にかかる税金です。
租税特別措置法により2014年(平成26)4月1日から2024年(令和6)3月31日までの間に作成される不動産売買契約書には「軽減措置」が適用されます。
ただし、軽減措置は不動産譲渡にかかる契約書のうち、記載金額が10万円を超えるものが対象になります。
また、契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。 印紙税の金額と軽減税率は以下の表の通りです。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
10万円超50万円以下 | 400円 | 200円 |
50万円超100万円以下 | 1,000円 | 500円 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
5億円超10億円以下 | 20万円 | 16万円 |
10億円超50億円以下 | 40万円 | 32万円 |
50億円超 | 60万円 | 48万円 |
※1 不動産の譲渡契約書のうち、契約金額が10万円以下のもの(契約金額の記載のないものを含む。)は、軽減措置の対象とならず、税率200円となる。
※2 契約書に記載された金額が契約金額が1万円未満の場合は非課税となる。
今物件が売れたとすると、軽減税率が適用されます。
ただし、印紙を貼り忘れたり消印をしていなかったりすると、罰則の対象になってしまうので注意が必要です。
通常の印紙税に加え、さらに2倍の金額の「過怠税」を払うことになる可能性があります。
印紙税は、契約書に印紙を貼り、さらに印鑑や署名で消印を行うことで納税したとみなされます。
ただし、印紙税を納付していない旨の申出をするなど、一定の場合には、もともとの印紙税額の1.1倍で済みます。
※1参考:国税庁 「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
※2参考:国税庁 印紙を貼り付けなかった場合の過怠税
登録免許税
「登録免許税」とは、不動産の名義変更時の登記の際に課税される税金のことです。
不動産を購入する際は、一般的に住宅ローンを利用する場合が多く、住宅ローンを組むといわゆる「担保」が設定されます。
担保を登記することを「抵当権」を「設定する」と言います。
しかし、マンションを売却するときは住宅ローンを完済し、「設定」されている「抵当権」を「抹消」しなければなりません。
この「抵当権抹消」の手続きをするタイミングで登録免許税がかかります。
売主が支払う登録免許税は「抵当権抹消登記」にかかる税金になります。
通常の場合は抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1つにつき1,000円です。
ただし、マンションの場合は建物と土地は別々の不動産と見なされるため、少し変わってきます。
敷地が一つ、建物が一つとしてカウントされるため、マンションの場合は登録免許税が合計2,000円以上かかります。
物件種別 | 登録免許税額 |
---|---|
土地 | 1000円(土地が1筆の場合) |
戸建て | 2000円(土地が1筆の場合) |
マンション | 2000円(土地が1筆の場合) |
他にも、登記上で土地が数個に分かれている場合もあるので、その場合は登記されている土地の分だけ登録免許税がかかります。
売却益がない場合は、「譲渡所得税」を払う必要はない
不動産を売却したときに必ず発生する税金について説明してきましたが、物件を売却して、利益ではなく損(譲渡損失)が出た場合の税金は前述の「印紙税」と「抵当権抹消の登録免許税」のみとなります。
物件を売却するときに譲渡損失が発生する理由には下記のようなものがあります。
- 建物の経年劣化
- 物件の周辺の土地価格相場が購入時よりも下がり、売却額が取得費用を下回った場合
上記のような理由から、不動産売却時に譲渡損失が発生した場合には、利益が出ていないため、利益にかかる税金である「譲渡所得税」を支払う必要はありません。
逆に、譲渡損失が発生した場合は、確定申告を行うことで「損益通算」の適用を受けて節税をすることができます。
例えばサラリーマンが、不動産売却にて譲渡損失が発生したとします。
その場合の損失分は、他の給与等の所得から差し引くことができ、差し引いた金額に対して課税されるという制度で、課税対象額が小さくなり、税金が安くなります。
確定申告によって払いすぎた税金が戻ってくる場合(税金の還付)もあります。
日本は累進課税制度で、所得の高い人の方が税率が高いため、所得の高い人ほど節税の効果が高くなります。
- 収入金額…マンションなどの不動産の売却収入
- 取得費…土地の場合は購入額、建物の場合は購入額から減価償却費を控除した価額
- 譲渡費用…仲介手数料や印紙税、測量費など、売却に要する費用
- 特別控除額
※特別控除額については後ほど詳しく解説します
計算の結果、譲渡所得がプラスのときは「譲渡益」、譲渡所得がマイナスのときは「譲渡損失」が発生することになります。
突然ライフプランの変更による住み替え、まとまった資金がどうしても必要になった場合など、やむを得ず価格が下がってしまっている物件を売却したときは利益が発生しないので税金の心配はありません。
逆に税金が気になるときはどんなときかと言うと、高値で物件を売却して、利益が出た場合ということになります。
利益が出た場合に発生する「譲渡所得税」とは?
- 所得税
- 復興特別所得税
- 住民税
所得税
所得税は、マンションを売却した利益に対して課税されます。
所得税はその名の通り所得に対して課税される税金です。
毎年1月1日から12月31日までの1年間の収入から所得控除を差し引き、一定の税率で課される国税です。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
※
また、所得税の計算式は以下の通りです。
日本では課税の対象額が一定を超えた場合、超えた金額に対してのみ高い税率を適用するという制度であり、「超過累進税率」といいます。
会社員であれば毎月の給与から所得税が差し引かれていますが、物件を売却した収入も同じ様に所得となり、課税されることになります。
ただし、不動産の譲渡所得は「分離課税」となるため、給与等の所得と合算されて税率が決まる形ではありません。
そのため、給与所得が高い人でも、低い人でも不動産の譲渡所得に対する税率は同じとなります。
それは、 譲渡所得に対する所得税は「分離課税という点」、「マンションを所有していた期間によって税率が変わるという点」 です。 こちらは次の住民税の項目で解説していきます。
住民税
給与所得や事業所得に対して毎年住民税が課税されるのと同じように、マンション売却に対する利益に対しても住民税が課税されます。
住民税の課税 例
①給与所得:700万円
②マンションを売却して発生した譲渡益:300万円
この場合、①の給与所得に対する住民税と②の譲渡益に対する住民税がかかり、①と②の税率が異なります。
①の給与所得に対する税率は10%。②の譲渡益に対する税率は「不動産保有期間が5年以下の場合は9%」、「不動産保有期間が5年超の場合は5%」となります。
※自己居住用の物件の売却で、10年超保有し、規定の条件を満たす場合は、課税譲渡所得6,000万円以下の部分は4%となります。
住民税は、地方税で都道府県が課税する道府県民税・都民税と、市区町村が課税する市町村民税をまとめたものです。
住民税の分類としては、個人に課税される個人住民税と法人に課税される法人住民税があります。
参考までに、不動産の譲渡益ではなく、給与等の所得に対する住民税の税率の内訳は下記となります。
所得割(標準税率) | 均等割(年額) | |
区市町村民税 | 6% | 3,000円(3,500円) |
道府県民税・都民税 | 4% | 1,000円(1,500円) |
合計 | 10% | 4,000円(5,000円) |
※
2014年(平成26年)から2023(令和5年)分は地方自治体の防災施策に充てられるため、道府県民税(都民税)と個人区市町村民税にそれぞれ500円が加算されます。
個人住民税は前年の所得に応じて課税される所得割と、所得にかかわらず固定金額で課税される均等割の2つからなり、これらを合算したものを納付します。
マンションの売却益に対する住民税も、所得税と同じようにマンションを所有していた期間によって、「短期譲渡所得」と「長期譲渡所得」で税率が変わります。
住民税の支払いのタイミングは売却した年の翌年6月~翌々年5月になります。
復興特別所得税
復興所得税とは、2011年の東日本大震災の復興の財源に充てるために、2013年(平成25年)1月1日~2037年(令和19年)12月31日までの25年間、所得税額に2.1%の税率を上乗せして課税されるものです。
具体的には、下記の財源に当てられることになります。
- 被災者支援
- 住宅再建・復興まちづくり
- 産業・生業の再生
- 原子力災害からの復興・再生
復興所得税の納付のタイミングは、所得税と同じく確定申告時になります。
個人事業主の事業用不動産売却時の消費税
個人でも「投資・事業用目的」のマンションを売却した場合は「事業」とみなされて、消費税10%が課税されます。
個人で、以下の2つの要件のいずれかに該当する場合は、当年度に消費税の課税事業者となり、納税義務が発生します。
- 事業の前々年の課税売り上げが1,000万円を超えていた場合
- 前年の1~6月の間の課税売り上げが1,000万円を超え、かつ給料支払額の合計が1,000万円を超えた場合。
逆を言えば、個人事業主の方が、マンションを売却した場合であっても「免税事業者」に該当する場合であれば、消費税が免除されます。
なお、個人事業主であっても、住替えで自宅を売却した場合は「事業」では無いため課税はされません。
つまり、2年前の個人事業の課税売上が1000万円を超えていなければ、「免税事業者」となり、消費税が免除されるのです。
はじめて課税業者になる時は、事前に税務署から「消費税課税事業者届出書の提出について」という案内が届きます。
税務は複雑で変更も多いので、よくわからない場合は必ず事前に不動産会社や税理士に相談をしてください。
また、マンション売却で、ポイントとしてもう一点考慮しなければいけないのは消費税は建物部分にしかかからないということです。
土地の場合、上記課税対象の要件には該当したとしても、税金の性格から課税することになじまないため、消費税は「非課税」となっています。※2
譲渡所得税は所有期間によって税率が変化する
ここまでで、所得税と住民税の税率がマンションの所有期間によって変わるという言葉が出てきたので、気になった方も多いと思います。
ここからは、税率の変化についてを詳しく説明していきます。
所有期間が5年未満の土地・建物であれば「短期譲渡所得」、所有期間5年以上の土地・建物であれば「長期譲渡所得」に該当します。
※厳密には譲渡日のある年の1月1日に所有期間が5年を超えているかどうかで判断します。
分類 | 所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興特別所得税 | 合計 |
---|---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年未満 | 30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
※復興特別所得税は「所得税」に対して2.1%かかるため、所得税の計算時は上記の「0.63%/0.315%」をかける計算が一般的。(所得税30%×2.1%=0.63%、所得税15%×2.1%=0.315%)
いくらかかる?税金の計算とシミュレーション
マンション売却にかかる税金の計算方法
マンションの売却にかかる税金の仕組みは少し複雑になっています。
次の順番の通り、1つずつ進めていきましょう。
マンションを売買して得た収入 - (新居の購入にかかった費用 + 売却時にかかった経費※)= 課税譲渡所得金額
※仲介手数料や印紙税などの諸費用
ここで大きなポイントになるのが、取得費に含まれる「物件の購入価格」です。
物件の購入価格はそのまま合算せずに、「減価償却費」を差し引かなければなりません。
※1
減価償却費の償却率
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率(非事業用) |
---|---|---|
金属造 (骨格材の厚みが3mm超~4mm以下) |
27年 | 0.038 |
金属造 (骨格の厚みが4mm超) |
34年 | 0.3 |
RC(鉄筋コンクリート)造 | 47年 | 0.022 |
※2
マンション売却にかかる税金計算シミュレーション
- マンションの種類:居住用
- 所有期間:8年
- 構造:RC造(鉄筋コンクリート)
- 新居購入価格:5,000万円(土地3,000万円、建物2,000万円)
- マイホーム売却価格:7,000万円
- 取得時の諸費用:250万円
- 譲渡費用:150万円
■課税譲渡所得金額の計算式
収入金額 ー( 取得費 + 譲渡費用) ー 特別控除額 = ⑤課税譲渡所得金額
まずは減価償却費を計算してから取得費を算出します。
減価償却費=2,000万円×0.9×0.022×8年=316.8万円
続いて、物件の取得費を求めます。
まずは建物部分の取得費を求めましょう。
建物部分の取得費=2,000万円ー316.8万円=1,683.2万円
建物の取得費を計算したら、土地と建物の取得費の合計を求めます。
この合計が物件の取得費になります。
物件の取得費(土地と建物の合計)=3,000万円+1,683.2万円=4,683.2万円
次に「課税譲渡所得金額」を計算します。
この金額をもとに、「譲渡所得」がプラスになれば、「譲渡所得税」がかかります。
マイナスの場合は「譲渡損失」に当たるため、「譲渡所得税」はかかりません。また、確定申告を行うことで節税をすることもできます。
長期譲渡所得」では、課税率は20.315%(復興税を含む所得税が15.315%、住民税率が5%)になります。 ※各種税率の確認はコチラ
各税額と合計金額のシュミレート結果
税の種別 | 計算方法 | 金額 |
---|---|---|
譲渡所得税 | 譲渡所得1,916.8万円 × 20.315% | 389万3,979円 |
印紙税 | 契約価格7000万円のため、 「5000万円超~1億円以下」 の税額が適用 |
3万円 |
抵当権抹消登記の 登録免許税 |
土地1筆と建物部分に それぞれ 1,000円 × 2 |
2,000円 |
合計金額 | 389万3,979円+3万円+2,000円 | 392万5,979円 |
※今回の事例ではわかりやすくするために、マイホームの特例や消費税については考えずに計算しています。
※印紙税額一覧はコチラ
各税金を支払う時期と税率のまとめ
税金の種類 | 納付時期 | 税率等 |
---|---|---|
所得税 | 確定申告時 | 長期:15% 短期:30% |
住民税 | 給与天引きなら翌年6月~翌々年5月 | 長期:5% 短期:9% |
復興所得税 | 確定申告時 | 所得税に対して2.1% |
印紙税 | 売買契約時 | 売買金額によって異なる |
登録免許税 (抵当権抹消) | 引渡時 | 不動産1個につき1,000円 |
消費税 | 各種サービス料の支払時期 | 料金の10% |
税金はマンションを売却した後にすぐ支払うものではありません。
一番大きな支払いになる所得税は、確定申告のタイミングで発生するので、資金計画もしっかりと考えておきましょう。
マンション売却して利益が発生した場合は確定申告が必須
マンションを売却した際、利益が発生した場合は税金を払う義務が生じるので、確定申告が必要になります。
自宅マンションの売却で損失が出た場合、
つまり「譲渡損失」がある場合は、一定の条件を満たせば「損益通算」や「繰越控除」ができて、税金が小さくなる特例があります。
そのため、利益が出た場合はもちろん、自宅を売って損失が出た場合も確定申告をすることをおすすめします。
損益通算した場合は、すでに支払っていた分で過払いになった税金があると、確定申告後に還付してもらえます。
※別荘などのマンションは損益通算を適用できません
そのため、所得が発生した場合はもちろん、自宅マンションの売却で損失が発生した場合も、不動産を売却した翌年は確定申告をすべきと考えて、損益通算を受けることができるか確認するとよいでしょう。
確定申告はマンションを譲渡した年の翌年2月16日から3月15日※までに行う必要があります。※近年は感染症の流行の影響で時期が変更になるケースがありました(2022年現在)
マンション売却後の確定申告に必要な書類一覧
書類名 | 取得方法 | 取得費用 |
---|---|---|
確定申告書B様式 | 税務署で入手 (ホームページでもダウンロード可) |
無料 |
分離課税用の確定申告書 | 税務署で入手 (ホームページでもダウンロード可) |
無料 |
譲渡所得の内訳書 | 税務署で入手 (ホームページでもダウンロード可) |
無料 |
売却時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
購入時の売買契約書 | 売買契約時に入手 | 印紙税分の費用 |
仲介手数料や印紙税の領収書 | 売買契約時に不動産会社から発行 | 無料 |
確定申告時に税務署から入手する書類は3つです。
- 確定申告書B様式
- 分離課税用の確定申告書
- 譲渡所得の内訳書
この3つは税務署か地域ごとの確定申告会場にて入手するか、税務署のホームページからもダウンロードができます。
一方で、自分で用意する書類は次の3つになります。
- 売却時の売買契約書
- 購入時の売買契約書
- 売却時の仲介手数料、印紙税、登録免許税等の領収書
- 購入時の仲介手数料、印紙税、登録免許税等の領収書
- 給与の支払金額を証明する源泉徴収票
- 公的年金の支払額を証明する源泉徴収票
売買契約書はマンションを売った時だけではなく、買った時のものも必要なため、忘れずに用意しましょう。
各種領収書類に関しては、コピーでもよく、原本は必須の書類ではありません。
マンション売却に使える控除・特例で節税・節約しよう
マイホームとして居住しているマンションを売却する際には、控除の発生する税金特例が存在します。
ここでは、税金特例と、その特例を使うための条件を解説していきます。
3,000万円控除
正式名称「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」は、マイホームの定義を満たした物件を売却したときに、譲渡所得から最大3,000万円の控除が受けられる制度のことです。
ここでいうマイホームとは「居住用財産」になります。
売却するのが投資用マンションではなく、自宅であれば、「3000万円特別控除」を受けることができます。
【3,000万円控除特例シミュレーション】
- マンションの種類:居住用
- 所有期間:8年
- 構造:RC造(鉄筋コンクリート)
- 新居購入価格:5,000万円(土地3,000万円、建物2,000万円)
- マイホーム売却価格:7,000万円
- 取得費:2,602万円
- 譲渡費用:150万円
課税譲渡所得金額の計算式
①収入金額 ー( ②取得費 + ③譲渡費用)ー ④特別控除額 = ⑤課税譲渡所得金額
シミュレーション
7,000万円ー(2,602万円+150万円)ー 3,000万円=0円
「3,000万円特別控除」を受けられる「マイホーム」の定義は以下のとおりです。
- 下記のいずれかを満たすマイホームであること
a. 現在、その人が生活の拠点として利用している家屋である
b. 転居済みの場合、転居後3年目の年末までの売却である
c.土地の売却契約締結が居住用家屋の取り壊しの日から1年以内で、かつ、その後土地を賃貸していない場合など
d. 単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である - 物件の買主が親族や夫婦、同族会社など、特殊な関係でないこと
- 売却した年の前年、前々年に、3,000万円の特別控除又はマイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算及び損失の繰越控除の特例の適用を受けていないこと
- 売った年、その前年及び前々年に、マイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
- 売却した不動産に関して、収用等の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと
- 災害によって売却する場合、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売ること
※1
ただし、「3,000万円特別控除」を利用すると、売却後に購入した物件は、後述する「住宅ローン控除」が受けられなくなります。
また、親からマンションを相続して、相続物件を売却する場合に関しても「3000万円特別控除」を適用して節税することが可能です。
国税庁のタックスアンサーでは相続物件に関しては下記のように記されています。
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、2016年(平成28年)4月1日から2023年(令和5年)12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができます。
※2 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
この他、期間限定の特例ですが、
2009年(平成21年)~2010年(平成22年)の間に土地を購入し、5年以上保有して売った場合などにおいては「譲渡益から1,000万円を控除」できます。
マンションの場合は敷地権の部分が1,000万円控除の対象になります。
こちらは、後述の「住宅ローン控除」と併用できるので、2009年(平成21年)~2010年(平成22年)の間に不動産を購入した人は抑えておきたい制度です。
住宅ローン控除
住み替えでマンションを売却する場合は、新居の購入で「住宅ローン控除」が使えます。
住宅ローン控除を受けるためにには、以下の要件を満たす必要があります。
- 減税を受けようとする人自身が、住宅の引渡し日または工事の完了から6ヵ月以内に居住すること
- 特別控除を受ける年の合計所得金額が2,000万円以下であること
- 対象となる住宅の床面積が50平方メートル以上であり、床面積の2分の1以上が自身の居住用であること
※ただし、合計所得金額1,000万円以下の場合で、2023年末までに建築確認を受けた新築住宅の場合は住宅の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満 - 対象となる住宅に対して10年以上にわたるローンがあること
- 居住用にした年とその年の前後2年ずつを合わせた計5年間に、居住用財産の譲渡による長期譲渡所得の課税の特例といった適用を受けていないこと
買取再販物件とは、業者が既存住宅を買い取り、リフォームして販売された物件のことです。
新築住宅の適用条件に加えて、下記の条件を満たすことが必要となります。
- 宅地建物取引業者から住宅を取得していること
- 宅地建物取引業者が住宅を取得し、リフォームを行ない再度販売するまでが2年以内であること
- 取得時点で、新築日から10年経過した住宅であること
- 建物価格に対し、リフォームの工事費用が20%以上を占めること
- 大規模修繕や耐震基準に適合するための工事、バリアフリー改修、省エネ改修など、対象となる工事が行われていること
新築住宅の適用条件に加えて、下記のいずれかの条件を満たすこと。
- 1982年1月1日以降に建築された住宅であること
- 現行の耐震基準に適合していること(1981年以前の中古住宅には、耐震基準を示す耐震基準適合証明書などが必要です。)
マンションを買い替え予定で、売却物件では税金が発生し、購入物件では住宅ローン控除を利用したいケースもあるかと思いますが、基本的には「3,000万円控除」や「特定の居住用財産の買い替え特例」と住宅ローン控除の併用はできません。
売却物件で利益が出てしまった場合には
- 売却物件で税金が安くなる特例を使う
- 購入物件で住宅ローン控除を使う
のどちらかしか選べません。※2
ふるさと納税は節税ではありませんが、所得が増えることでふるさと納税の控除限度額が増えますので、多くの返礼品を取得できるチャンスとなります。
特定居住用財産の買換え特例
特定の居住用財産の買換え特例は、
マイホーム(居住用財産)を売って新しくマイホーム(居住用財産)を買ったときに、今の家を売却した譲渡価額よりも、新しく購入した家の方が金額取得価額の方が高い場合、
譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。
対象者:
令和5年12月31日までにマイホームを売って、新たにマイホームを購入(買い換え)した人
- 前提:譲渡損失が発生していること
- 期間: 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却金額: 1億円以下であること
- 特例の併用:他の特例を過去2年に適用していないこと(3,000万円特別控除、10年超所有軽減税率の特例など)
- 居住年数:売却した年の1月1日時点で居住期間が10年以上であること
- 対象:日本国内の不動産に限定
- 床面積:登記簿上の床面積が50平方メートル以上あること
- 購入日:マイホームを売った年の前年から翌年までの3年の間にマイホームを購入すること。
- 入居日:取得日の翌年12月31日まで居住すること
- 買い替えるマイホームが中古住宅である場合
→「耐火建築物」の中古住宅である場合、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること
→「耐火建築物以外」の中古住宅である場合、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または、取得期限までに一定の耐震基準を満たすものであること
事例
1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換えた場合
通常の場合、4,000万円の譲渡益が課税対象となります。
しかし、特例の適用を受けた場合、売却した年に譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
※1
7,000万円で買い換えたマイホームを将来8,000万円で売却した場合
【間違い】
売却価額8,000万円と購入価額7,000万円との差額である1,000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に対して課税されない
↓
【正解】
実際の譲渡益1,000万円に加えて、特例の適用を受けて課税が繰り延べられていた4,000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5,000万円が、譲渡益として課税される
特定の居住用財産の買換え特例は、3,000万円特別控除の方が納税額が少なくなるため、利用されるケースは少ないです。
また、特定の居住用財産の買換え特例は、あくまで売却時の譲渡所得への課税を繰り延べであり、免除されるわけではありません。
ただし、「3,000万円特別控除」と「特定居住用財産の買換え特例」のどちらを選択した方が有利かは個々人の状況によって異なります。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
「譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例」は、
自宅として利用していたマンションの売却において、一定の要件を満たす場合に、
売却額が購入額より低くなり、譲渡所得がマイナスになる「譲渡損失」になったときに使える特例です。
自宅として利用していたマンションの売却に際しては、利益が出た時の税金の控除だけでなく、譲渡損が出た場合に「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」を行うこともできます。
対象者:マイホーム(旧居宅)を売却して譲渡損失が生じた方で、新たにマイホーム(新居宅)を購入した方
- 前提:譲渡損失が発生していること
- 期間: 住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
- 売却金額(譲渡価額):住宅ローンを下回っていること
- 所有期間:売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
- 特例の併用:対象となる住宅を売却した年、前年以前3年以内に、他の資産の売却をして、居住用財産を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を受けていないこと
- 合計所得:合計所得金額が3,000万円を超える年は適用外
- 床面積:登記簿上の床面積が50平方メートル以上あること
- 住宅ローン:取得した年の12月31日において、償還期間10年以上の住宅ローンを有すること
- 居住日:取得した年の翌年12月31日までの間に居住する見込みであること
「損益通算」と「繰越控除」を具体例を交えて説明します。
損益通算について
自宅として利用していたマンションを売却することで譲渡損失が1,000万円発生してしまったとします。
その場合に、不動産を売却した年の課税所得が仮に1,200万円だとしたら、
1200万円-1000万円=200万円
が課税対象になります。
このように課税所得から、譲渡損失を控除することができるのが損益通算です。
繰越控除について
上記同様1000万円の譲渡損失が出て、その年の課税所得が500万円だったと仮定します。
課税所得は
500万円-1000万円=△500万円
となり、損益通算を行っても「控除しきれなかった譲渡損失が500万円」が発生します。
その「損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失」を譲渡の年の翌年以後3年間繰り越して控除(繰越控除)することができるのが繰越控除です。
こちらは要件として、住宅ローンの借り入れが残っていることが必須条件となります。
購入金額:6,000万円
借入金:5,000万円
売却代金:2,000万円
借入金残高:3,000万円
「借入金残高:3,000万円」ー「売却代金:2,000万円」=1,000万円(通算損益限度額)
4,000万円>1,000万円
∴1,000万円が損益通算できる金額
※1,2
マンション売却時の税金のまとめ
今回勉強した税金の制度の仕組みや計算方法を使ってシミュレーションしてみると、売却の適切なタイミングや売却価格も今までよりも判断しやすくなります。
そのために、売却時の計算に必要なマンションの取得費や、売却にかかった経費などが分かる書類は、いつでも確認できるよう保管しておいてください。
A.印紙税、登録免許税のように必ずかかるものと、利益が出た場合にかかる税金の譲渡所得税(所得税+住民税+復興特別税)があります
A.3,000万円特別控除、買換え特例、譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例で税金を抑えたり、繰延ができます
A.→必ずかかる、印紙税、登録免許税は物件引き渡しのタイミングで、譲渡所得税は確定申告のタイミング、住民税は売却した翌年度の6月以降となります。
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