この記事で学べること・ポイント
- 重要事項説明書の目的と書かれている内容
- 重要事項説明書と契約書の違い
- 重要事項説明書の注意点や対策方法
- 重要事項説明書のチェックリスト
重要事項説明書の目的と記載事項
重要事項説明書とは、宅地建物取引業法(通称、宅建業法)にもとづく、不動産取引における重要な情報を買主に伝えるための「情報提供文書」です。
売買契約を結ぶ前には、宅地建物取引業者により重要事項説明が行われます。
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STEP1資金計画を立てる
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STEP2物件選び・情報収集
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STEP3物件の内覧
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STEP4購入申込
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STEP5住宅ローンの事前審査
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STEP6売買契約★重要事項説明はこの前に行われる
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STEP7住宅ローンの本審査と契約
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STEP8決済・物件引き渡し
重要事項説明は、重要事項説明書をもとにして、買主に向けて口頭で説明が行われます。
その後、説明を受けたことへの証明として、説明を受けた買主が署名や捺印を行います。
重要事項説明書の目的
「重要事項説明書」の主要な目的は、以下の3点です。
- 情報開示
情報開示の観点から、売買契約を結ぶ前に、必要かつ重要な情報を買主に明確に開示する目的のために行われます。
この開示により、買主は不動産の実態や関連する法的事項について十分に理解し、その上で適切に契約を締結できます。
- 消費者保護
消費者保護の観点から、重要事項説明書は買主を守る役割を果たしています。
具体的には、不動産の欠陥や法的制約など、契約に関わる重要な情報が適切に伝えられることで、将来のトラブルや争いを最小限に抑えられます。
- 宅建業法上の義務
宅建業法第35条により重要事項説明書の作成や提示、そして内容の説明という義務が課せられています。
具体的には、宅地建物取引士(宅建の免許を有する者)が、契約が成立する前に、取引士が記名した書面を交付し、取引士証を提示して説明します。
契約書との違い
重要事項説明書は、消費者が不動産取引のリスクや条件を十分に理解するための「情報提供文書」です。
署名・捺印しても「契約」にはならず、またキャンセルもできます。
一方、契約書は、双方の取引条件や権利義務を「法的に確定するための合意文書」です。
契約書は署名・捺印すると法的な効力が発生し、キャンセルはできません。
契約を取り止めたい場合は「解約」となり、さまざまな権利義務が発生するため注意しましょう。
重要事項説明書は、「契約締結前」に消費者が内容を理解したことを確認した後、署名・捺印します。
契約書は、双方が取引条件に合意した際に作成され、署名・捺印することで正式な契約となります。
そのタイミングは、「重要事項説明書への署名・捺印後」となります。
重要事項説明書に書かれている内容
内容が多岐にわたるため、全体像をつかんでから各項目を見ていくと理解しやすくなりますよ!
重要事項説明書には、以下のような内容が主に記載されています。
①取引物件 | ②取引条件 | ③その他の事項 |
---|---|---|
・物件の概要 ・権利関係 ・法的制約 ・物件の状態 |
・価格と支払い方法 ・引き渡し ・契約解除 ・宅地建物取引業者の情報 |
・周辺環境 ・中古住宅の場合の特別な事項 ・その他注意事項 |
①取引物件に関する内容
■物件の概要
所在地、土地の面積、建物の構造・用途・築年数などの基本情報が記載されています。
■権利関係
物件の所有権、他の権利(例:抵当権、賃貸契約など)、権利に関するトラブルの有無等が記載されています。
権利関係の例
あるマンションを購入しようとした際、販売元の業者から「この物件はまだ分筆登記がされていない」という情報が開示されたとします。
分筆登記とは、大きな土地を複数の土地に分けて、その分けたそれぞれの土地を独立した不動産として登記することを指します。
このため、分筆登記が完了していない状態で購入を進めると、将来的に所有権の移転がスムーズに行えないリスクが発生します。
■法的制約
都市計画法にもとづく区域や用途地域、建築基準法に関する内容、その他の法的制約(例:景観法や文化財保護法による制約)が記載されています。
法的制約の例
購入しようとしていた土地の近くに、国の重要文化財に指定されている古い神社が存在していたとします。
このため、土地の開発や建築活動に際して、文化財保護法にもとづくさまざまな制約が課せられることが判明する場合があります。
■物件の状態
建物の瑕疵(かし)や欠陥、害虫の被害、浸水の履歴などがある場合は、基本的には記載されています。
②取引条件に関する内容
■価格と支払い方法
物件の価格、支払いのタイミングや方法、手付金などの詳細が記載されています。
■引渡し
物件の引渡し時期や方法、引渡し時の物件の状態などが記載されています。
■契約解除
契約を解除する場合の条件や、違約金が発生する場合の条件などが記載されています。
■宅地建物取引業者の情報
契約に関わる宅地建物取引業者の名前や所在地、免許番号などの基本情報が記載されています。
③その他の事項
■周辺環境
近隣の開発計画、公共施設の存在、騒音や振動の問題、土壌汚染の可能性などが記載されています。
■中古住宅の場合の特別な事項
前所有者からの情報提供の有無、前所有者による改築・増築の有無や内容などが記載されています。
■その他注意事項
物件に関連する特別な注意や制約、取引に関連するその他の重要な情報が記載されています。
重要事項説明のタイミング
重要事項説明は、必ず契約の前に実施されます。
実施日については、重要事項説明と売買契約は同日に開催される場合があります。
これは、不動産会社側の目線からすると、手間の問題もありますが、契約までの間に日数を挟まないことで、消費者の購入辞退リスクを減らしたいという思惑があります。
重要事項説明は必ず売買契約の前に行われる
重要事項説明は宅建業法にもとづき、売買契約の前に必ず行われるべきものとされています。
この目的は、消費者が不動産取引のリスクや条件を十分に理解し、適切な判断を下すためです。
重要事項説明を受けずに契約を進めることは、消費者の権利を侵害する行為となります。
後のトラブルの原因ともなり得るため、必ず説明を受けるようにしましょう。
なお、重要事項説明を怠るなど、宅地建物取引業者の違反行為に対しては、監督官庁の国土交通省より、処分などが課せられます。
宅建業法にもとづき、重要事項の説明を怠った宅地建物取引業者に対しては、以下の罰則が定められています。
- 罰金
重要事項の説明を怠った場合、法人に対しては最高で1,000万円以下、個人に対しては最高で500万円以下の罰金が科せられる可能性があります。 - 営業停止命令
宅地建物取引業者としての業務を一時的に停止させる命令を受ける可能性があります。
この期間は、短いもので数日から数ヶ月以上にも及ぶことがあります。 - 免許の取り消し
重大な違反や繰り返しの違反があった場合、宅地建物取引業の免許を取り消されるリスクがあります。 - 損害賠償責任
重要事項の説明を怠ったことで消費者に損害が生じた場合、宅地建物取引業者は損害賠償責任を負うことが考えられます。
なお、重要事項説明は、「オンライン」による重要事項説明(IT重説)も導入されています。
これにより、遠隔地に所在する消費者の移動や費用などの負担が軽減されることや、重要事項説明実施の日程調整の幅が広がるなどの効果が期待されています。
重要事項説明書は事前にもらうことができる
重要事項説明書を事前にもらうメリットとアドバイスを、3つ挙げていきます。
- 十分な確認時間がとれる
契約の場面は、時間的な制約や精神的なプレッシャーが伴います。
特に、重要事項説明書は内容が専門的でもあり、その場ですべてを読み込むことは困難です。
事前に重要事項説明書をもらうことで、自分のペースでじっくりと内容を吟味し、理解を深めてから、臨むことが出来ます。
- 疑問や懸念の洗い出しができる
事前に内容を理解していれば、疑問点や懸念点を明確にして、契約の際に不動産会社に具体的な質問や確認ができます。
契約当日に突然の情報に驚かされるこがなくなります。
- 第三者へ相談できる
疑問点や懸念点を家族や友人、専門家などの第三者に相談できます。
他者の視点や専門的な意見を取り入れることで、よりバランスの良い判断が可能となります。
なお、重要事項説明書を事前にもらえない場合があります。
業者の無知や怠慢の場合もありますが、物件や取引に問題があることを消費者に知られたくないという業者の意図で、故意に渡さない場合もあります。
このような場合は、渡さない理由を聞くとともに、宅建業法にもとづく消費者の権利を要求しましょう。
重要事項説明書の注意すべき項目
重要事項説明書は、基本的にすべての項目を確認するべきです。
物件の権利関係について
所有権、地役権、抵当権、賃借権などにおいて、不動産の権利関係が不明確な場合、後に権利を巡るトラブルが発生する可能性があります。
■所有権
相続により複数の相続人が物件の共有者となっている場合があります。
この場合、全ての共有者の同意なしに物件を売却することはできません。
売却する場合は、すべての共有者からの同意を取り付ける必要があります。
所有権のトラブル事例
ある夫婦が都心のアパートを購入しました。
しかし、数年前に2人とも亡くなり、そのアパートの所有権は彼らの3人の子供(長男・次男・3男)に相続されました。
このケースにおいて、アパートの所有権は3兄弟の共有となっています。
長男が経済的困難に直面し、そのアパートを売却してお金を得ようと考えました。
彼は不動産会社に相談し、査定を受けることになりました。
しかし、業者から「すべての共有者からの同意が必要」とのアドバイスを受けました。
長男は次男・3男にアパートを売却する意向を伝えると、次男は賛成の意を示しましたが、3男は将来的にそのアパートを利用する計画を持っていたため、売却に反対しました。
このケースにおいて、3男の反対があるため、長男はアパートを売却することはできません。
■地役権
隣地への通行権や排水権などが設定されている場合、物件の使用に一定の制約が生じることがあります。
地役権のトラブル事例
一戸建ての家を購入したいと思った時、その物件が隣接する土地の持ち主と地役権の契約を結んでいることが判明した例を見てみましょう。
この地役権は「通行権」で、隣接する土地の持ち主が、物件の敷地を通って裏道に出るための権利を持っていることを意味します。
これにより、購入者は隣接する土地の持ち主が自らの敷地を通ることを許容しなければならなくなります。
■抵当権
購入しようとする物件が住宅ローンで担保となっており、購入後、前所有者のローンが未返済である場合、新たな所有者がその責任を負うリスクがあります。
このため、売買の際には抵当権の抹消手続きが必要です。
■賃借権(借地権)
賃借人(物件をお金を払って借りている人のこと)は、居住のために建物や土地を使用する権利をもつ一方、賃料(地代)を支払う義務を負います。
また、賃貸人(その物件のオーナーや地主のこと)の承諾がないと譲渡したり転貸することはできません。
賃借権(借地権)のトラブル事例
土地を購入しようと思ったが、その土地に家が建っており、家の所有者が土地を賃借している場合があります。
土地の所有者と建物の所有者(借地人)が異なる場合、建物の取り壊しや土地の使用に関して賃借人(借地人)の同意が必要になることがあります。
物件の法的制約について
都市計画法や建築基準法にもとづく規制により、購入した物件において増改築が制限される場合があります。
■用途地域にもとづく制限
物件が「住居専用地域」に位置している場合、商業施設や工場などの建築は原則として許可されません。
自宅の一部を事務所や店舗として使用する場合や、賃貸物件として活用したい場合には、用途地域の制限を事前に確認する必要があります。
■建ぺい率や容積率による制限
土地面積に対する建物の建築面積や容積が、所定の建ぺい率や容積率を超える場合、増築は許可されません。
すでに建ぺい率や容積率の限界まで建物が建てられている土地では、さらなる増築は法的に難しい状況となります。
■日照、風通し、通行の確保
隣接する土地や建物への日照や風通しを確保するための法的な規制が存在します。
これに違反するような増築は許可されません。増築する位置や高さに制限が生じることがあります。
■防火地域や準防火地域の制限
都市中心部などの特定の地域では、火災の拡大を防ぐために建物の防火構造が義務付けられています。
このような地域での増改築する際は、防火構造に適合する建材や設計を採用する必要があります。
これらの規制や制約を無視して増改築すると、後に行政からの是正命令や撤去命令を受けるリスクがあります。
したがって、増改築を考える際は、都市計画法や建築基準法にもとづく規制をしっかりと確認し、適切な手続きを踏むことが必要です。
物件の瑕疵や特記事項について
浸水の履歴、害虫の被害、近隣とのトラブルなどの情報を十分に確認しないまま購入すると、後で予期しない問題や追加のコストが発生する可能性があります。
■浸水の履歴
浸水のリスクがある場合、防水処置や排水設備の改修、家具や家電の配置の見直しなど、さまざまな対策が必要になることがあります。
浸水の履歴の例
地下室を持つ家を購入したが、前の所有者が過去に地下室での浸水の経験があったことを伝えていなかった。
大雨の際、浸水により家具や家電が損壊し、大きな修復費用が発生した。
シロアリなどの被害は放置すると建物の強度を低下させる可能性があり、大きなリスクとなります。
害虫の被害の例
購入後しばらくすると、家のあちこちからシロアリが見つかり、家の構造部分に被害が及んでいることが発覚した。
専門業者を呼び、駆除と被害部分の補修に多額の費用がかかった。
近隣とのトラブルは精神的なストレスだけでなく、場合によっては法的費用も発生することがありますので、注意しましょう。
近隣とのトラブルの例
購入した物件が、前所有者と隣地との間で境界を巡るトラブルを抱えていた。
そのトラブルが継続しており、新たに購入した本人もその問題に巻き込まれ、法的手段を取らざるを得なくなった。
なお、重要事項説明書の特記事項や売買契約書の特約事項は、本契約の内容よりも優先して適用されます。
取引の条件について
物件の価格、支払い方法、手付金、引渡し時期、契約解除の条件などをしっかりと理解しておかないと、金銭的なトラブルが生じる可能性があります。
トラブル事例
購入価格に含まれると思っていたもの(例:駐車場や共用施設の使用料)が別料金であると後から知らされ、追加の支払いが発生した。
トラブル事例
全額一括での支払いを想定していたが、分割払いを求められるなど、支払い方法に関する認識のズレが生じた。
トラブル事例
購入を途中でキャンセルした際、手付金の返還を求めたが、全額返却されなかった。
トラブル事例
約束されていた引渡し時期よりも大幅に遅れ、一時的な住居を探すなどの追加費用が発生した。
トラブル事例
一定の欠陥を理由に契約を解除しようとしたが、業者との間で欠陥の認識やその重大性に関して齟齬が生まれるトラブルが発生した。
これらの事例は、不動産取引において契約の詳細や条件を十分に確認・理解しないまま進めることのリスクを示しています。
購入の際には、すべての条件や内容を明確に理解するようにしましょう。
周辺環境や将来の計画について
近隣の開発予定や公共の計画など、将来的に周辺環境が大きく変わる可能性があると、物件の価値や生活環境に影響が出ます。
トラブル事例
新築のマンションに引っ越した直後に、間もなく隣接する空き地に高層のビルやマンションの建設が始まることを知った。
完成後、日照時間が大幅に短縮し、風通しも悪くなった。
トラブル事例
閑静な住宅街に位置する一戸建ての住民が、近くに大型モールの建設計画があることを引っ越した後に知った。
開業後、騒音や増加する車の交通量、深夜までの営業などにより生活環境が悪化した。
トラブル事例
家の近くに大きな公園や学校の移転計画が発表され、建設工事や学校行事に伴う騒音、交通渋滞などの影響を受けることになった。
これらの事例は、物件の購入時や居住中に周辺の開発予定や公共の計画に関する情報を確認し、将来的な影響を予測することの重要性を示しています。
重要事項説明書のチェックリスト
最後に、重要事項説明書への署名・捺印にあたり、最低限、下記リストの内容は確認しておきましょう。
種別 | 項目 | チェック内容 |
---|---|---|
取引物件 | 物件の基本情報 | 物件の正確な所在地、面積、構造が記載されているか |
物件の権利関係 | 所有権者や抵当権、地役権や賃借権(借地権)などの他の権利関係が明記されているか | |
法的制約 | 用途地域(例:住居専用地域など)、建築基準法に基づく内容(例:建ぺい率、容積率)が記載されているか | |
物件が耐火地域や準耐火地域に該当するかが明記されているか | ||
物件の瑕疵や 特記事項 |
浸水の履歴、害虫の被害、近隣とのトラブルなど、過去の問題や現在の状況が詳細に記載されているか | |
取引条件 | 取引の条件 | 物件の価格とその内訳、支払い方法、手付金の金額と返却条件、引渡し時期、契約解除の条件が明記されているか |
その他の事項 | 周辺環境や将来の計画 | 近隣の開発予定や公共の計画など、将来的な周辺環境の変化が記載されているか |
その他の注意事項 | 物件に関連するその他の重要な情報や注意点(例:管理組合の事情、修繕計画など)が含まれているか | |
不動産業者の情報 | 業者の正確な名称、住所、連絡先、宅建業者番号などが記載されているか |
まとめ
A.契約書と重要事項説明書の違いは、内容、目的、法的効力などがある。重要事項説明書は、署名・捺印をしても、契約そのものの証明にはならない。
A.契約日前日までに重要事項説明書を受け取るメリットとして、十分な検討時間が得られる、不明点や疑問を解消できる、冷静な判断ができる、などが挙げられる。
A.物件の基本情報、権利関係、法的制約、取引条件、周辺環境や将来の建築計画などの詳細をしっかりとチェックする必要がある。
A.内容が理解できない場合は、契約前に不動産会社に必ず聞く。
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